5.下神明

 戸越公園から流れ出た川とそれに平行な用水が戸越銀座の谷を西から流れてきた川に合流していた地域です。 谷間の底に1本、西の斜面に1本、東の斜面に1本流れていたという構造です。

    5.下神明 
     6.ゼームス坂
      7.目黒川

出典:国土地理院電子国土Web(矢印などは加工部分)

 薄い青の線が品川用水や関連する川などの流路を示しています。

 この地域には大きく3本の水路があると思います。

 1本は戸越公園駅から下神明駅の高架下を通って権現台踏切を横切り、目黒川のほうへ向かうルートです。

 もう1本は戸越公園の池から流れ出て下神明駅の高架下を通って蛇行しながら横須賀線を何度か横切り、三ツ木通りに流れ込むルートです。

 さらにもう1本は戸越公園の外側を回って横須賀線の西側に沿って斜面の高いところを流れ、三ツ木通りに流れ込むルートです。

戸越公園駅 ~ 下神明駅 ~ 権現台踏切

 これは下神明駅のすぐ下を通り、しながわ中央公園を横切って、湘南新宿ラインの権現台踏切のそばを流れ落ちるルートです。

 権現台踏切のそばのマンホールが大きい水音を立てていることでも有名です。

 「3.西大井」の中ほどの三叉路のところで前回は立会川方向に進みましたが、今回は左の権現台方面を進みます。

 この道も水路の跡らしく、ゆるやかに蛇行しながら延びていきます。

 横須賀線にぶつかります。水路はこのまままっすぐ突っ切る方向に流れていたようですが、途切れているので左に迂回して反対側に出ます。

 水路はこの先の交差点にある交番の手前を通過します。写真では正面にお巡りさんが立っているのがわかります。そしてこの交差点で左に曲がって下神明駅に向かいます。

 左に曲がってからの路地は左側の歩道だけとても広いです。水路の跡であることを示しているのでしょう。

 そして下神明駅に出ます。

 下神明駅の下を通ったあとはしながわ中央公園の中を横切って権現台踏切の横から湘南新宿ラインの線路に沿って流れ落ちます。痕跡はありませんが流れ落ちたところに溜池があったそうです。

 ただ、その後の流れについては、JRの線路が広がっているし、その隣に第一三共の敷地も広がっていて近づくことができないので、はっきりした痕跡を確認することができていません。

 目黒川方向に加えてJRの線路を横断してゼームス坂のほうに向かう流れがあったという説明も見かけるのですが、行って確認することができないので、残念ながらこのルートの探索はここで中断です。なお明治(1911)の地図では三ツ木通りの流れが東に向かって浅間台の下につながっている様子が描かれています。

戸越公園 ~ 下神明駅 ~ 三ツ木通り

 次は戸越公園の池から流れ出た水路を追っていきます。

 戸越公園の池には「2.戸越」でも書いたように品川用水の水が流れ込んでいたらしいですが、それと池から先の流れとは話が別で、そもそも昔から池の水が自然の川として目黒川まで流れていたという説明があります。

 戸越公園の南東の出入り口(下神明駅に近いほう)からスタートします。

 前方の白い車の左側ぐらいのところに池の出水口があります。水路はこの写真の左から右へ流れていたようです。

 その先へ行ってみます。池の出水口の延長線上に細い下り坂の路地があります。

 するとすぐに大井町線の線路の下をくぐります。向こうに見えるのは都道420号です。

 残念ながらここから先しばらくは都道420号の整備によってさっぱりしてしまったので、水路の跡を探すことはおそらく不可能です。

 正面に工事のために通行止めになっているところが見えますが、そこを水路が通っていて、下神明駅の手前で左にカーブしながら流れ落ちていたはずなんですが、痕跡は期待できそうにないです。

 正面の工事現場の反対側にいくと次のようになっています。左の上に新幹線の高架が見えます。この工事中のフェンスの先に水路の跡っぽい路地があったんですが、そばの建物ごと整理されてしまっているので、工事が終わって通れるようになったとしてももう何もないだろうと思います。

 この写真の場所は段差になっていて、水路は奥の高いほうを右から左(西から東)に流れていたのではないかと思われますが、この高いほうの水路の跡と思われる路地は横須賀線によって分断されています。

 分断されているちょうど反対側にいくと、水路の跡が続いているように見えます。

 この路地は下神明駅側から逆方向(西向き)に進まないと辿り着けないところで、行き止まりです。でも位置は直前の水路跡のちょうど延長線上にあるし、後に出てくる「古戸越橋(ことごえばし)」を通る水路の跡とを結びつける位置でもあるので、ここを水路が通っていたと考えることができそうです。

 一方、段差の低いほうは水路跡っぽくない道路が少し続いて横須賀線と湘南新宿ラインの下をくぐります。すると細い路地が現れます(写真の右奥)。この路地は右側にあるしながわ中央公園との段差に沿って北へカーブしていきます。分岐点に大きな木があるのも水路探索あるあるでしょうか。

 路地を進むと小さい四つ角があります。ついこのあいだまではここに有名な「古戸越橋(ことごえばし)」が掛かっていました。うっすらと憶えてます。

 そしてしながわ中央公園との段差を右に見ながら湘南新宿ラインのほうへ進みます。

 しかしここから先は線路で何個所も分断されてしまっていて水路の跡に沿ってずっと進むことはできません。まず湘南新宿ラインをくぐって横須賀線との間の狭い場所に出ます。すると横須賀線に向かって斜めに水路跡の路地があります。

 この路地も横須賀線までいって行き止まりです。さらに横須賀線の下をくぐって西側に出ます。

 横須賀線の反対側、さきほどの路地の延長線上も行き止まりですが次のような様子です。

 当たり前ですが人が立ち寄るような状態ではないです。

 ここで振り返ると次のような様子です。

 風で飛んできたような大きな枝が散らばっています。片づけなければならない理由もないのでしょう。

 右に横須賀線(とその上の新幹線)を見ながら進みます。

 途中、いい感じにコケの生えた壁があったりします。この壁もよく写真で紹介されています。

 さらに進むと路地は再び横須賀線のほうに吸い込まれるように斜めにぶつかっています(3回目の交差)。

 この先の線路の反対側にぐるっと回ってみると次のような様子です。

 行き止まりだし、そもそも通路と言えるのかどうかも怪しいのでいろいろ物(?)が置かれているのも仕方がないのか・・・。

 ここで振り返ると次のような様子です。いい感じにコケが生えていてここだけ見れば風情があります。

 この正面も水路の跡は続くのですが扉で塞がれています。再び反対側に回ります。

 住宅の境界線上に向こうから水路の跡が延びてきます。道路よりも盛り上がっているのがおもしろいです。ど真ん中に標識が建てられているのでもはや通路ではないという主張ですね(笑)。

 道路を挟んで反対側にも路地は続いていきます。

 そしてここを抜けると三ツ木通り(に沿って流れていた川)に合流します。これで「1.百反通り」からスタートした水路跡巡りも三ツ木通りの川に戻ってきてぐるっと一周したことになります。

 正面の奥に湘南新宿ラインのフェンスが見えます。このフェンスの向こうがどのような流路になっていたのかは残念ながら分かっていません。

戸越公園 ~ 宮城湯 ~ 三ツ木通り

 さてこの地域最後の水路を探索してみようと思います。

 この水路が他のコンテンツで紹介されていたのを見たことはないのですが、比較的はっきりと痕跡が残っていると思います。

 そもそもここを探索してみようと思ったきっかけは、いくつかの資料で戸越公園(と文庫の森)の前身のお屋敷の周囲に堀のようなコの字の水路が巡らされている様子が描かれているのに気付いたことです。資料の1つ(1845年の絵図)には堀状の水路の端から流れ出す水路も描かれていました。でも戸越公園の池から流れ出た川のほうには途中で合流してくる水路は見当たらなかったので、これはきっともう1本別の合流していない独立の水路があったのではないかと推測したのです。

 等高線を観察してみました。

出典:国土地理院電子国土Web(矢印などは加工部分)

 戸越公園の近くから三ツ木通りのほうまで、いかにも水路を通したくなるような斜面が続いていることが分かります。しかも、この縮尺では分かりにくいですが地図を拡大して観察すると、この矢印に沿っていい感じに「行き止まりの路地」が続いていることも読み取れました。

 そこでさっそく現地に行ってみました。

 上の地図に示した白い矢印に沿って歩くと、いくつか水路の痕跡らしき路地があります。

 途中で急に細くなったりするところが怪しいです。

 古い井戸があったりします。

 延長線上にいくつか行き止まりの路地が続きます。

 この先で水路の痕跡は横須賀線に沿って北向きにカーブしていきます。

 この付近で発見した水路跡っぽい路地の位置を地図上に示します。高いところを流れていた用水の水路と低いところを流れていた川の水路が見て取れます。

 この大井町線沿いの段差のところでは、東西方向の細い路地の高さに対して南北方向の下り坂のほうが少し凹んでいて(つまり坂に沿って削られてなだらかになっている)、東西方向の路地どうしがつながった1本の水路だったと言いにくい状態になっています。大井町線に向かって下る坂をなだらかにする工事が行われたためじゃないかと想像してみました。

 絵にするとこんな感じです。

 さて、横須賀線のすぐそばの路地は上の地図から分かるように谷の低いところを通っていますが、その路地に直角に交わるようにたくさんの坂道があります。ざっと数えると6本あります。

 北に進みながらそれらの坂道を1本1本チェックしてみました。

 まず1本目の坂道は上った先で北に90度に曲がってから行き止まりになります。

 2本目の坂道の途中、左側(南側)にいきなり水路の跡らしき行き止まりの路地があります。

 そしてこの背中側にも同じように路地が続いています。

 こちらも行き止まりです。

 同じ2本目の坂道のもう少し上のほうにも左右に行き止まりの路地があります。

 延長線上に他の路地があるかどうかを考えると、この高いほうの路地がメインの水路跡だと思われます。

 3本目の坂の低いほうの左側です。

 3本目の坂の低いほうの右側です。水路の跡の真上に門扉がある様子がおもしろいです。

 3本目の坂の高いほうの左側です。

 3本目の坂の高いほうの右側はお風呂屋さん(宮城湯)で、その左側に路地があります。この路地は突き当たって右に曲がれば通り抜けることができます。

 4本目の坂にある路地は左側です。路地の位置もだんだん下がってきているのがわかります。

 5本目の坂にある路地は右側です。よくみると水路の跡が門の手前に少しだけ見えています。水路跡の上に門を作った格好になっているのがおもしろいです。

 6本目の坂の右側は小さい崖の下に水路の跡があるので、金網から覗かないと見えません。

 ここで横須賀線に向かって下っていく坂が終わって、三ツ木通り沿いの低地(戸越銀座から流れてきた川の跡)に出ますが、その手前で西側の崖が少し覗いているところがあります。

 駐車場の西側の端に沿った形になっています。

 この右奥のところは通り抜けられないので、向こう側の三ツ木通りから近寄ってみます。

 三ツ木通りの川との合流点と思われるところから眺めると右側に崖の続きが見えます。この崖の下の通路が水路の跡なのかどうかはわかりませんが、それっぽく見えなくもないです。

 この先は横須賀線をくぐる尾根(「1.百反通り」でも出てきました)にぶつかって急な上り坂になります。坂の途中で横を覗くと、その尾根の南側の側面を観察することができます。低いところを流れる三ツ木通りの川と高いところ(尾根)を流れる用水がすぐそばを流れていた様子を想像するとおもしろいです。

 これで「1.百反通り」からスタートした水路跡巡りも三ツ木通りの川に戻ってきてぐるっと一周したことになります。

 次は「6.ゼームス坂」です。